【定義】
協議離婚とは、夫婦の話し合いで離婚することです。
【解説】
離婚には協議離婚、調停離婚、裁判離婚などの種類があります。
調停離婚や裁判離婚には裁判所の関与があるのに対し、協議離婚は裁判所の関与なく、夫婦二人だけの話し合いで決める
ことができる離婚です(民法763条)。協議離婚をする場合、離婚の理由や生活の実態などに関する条件はありません。
このように、協議のみによる離婚を自由に認める法制は、世界では珍しいといわれます。
協議離婚は届出によって成立し、効力が発生します(同764条、739条)。届出とは、離婚届を役所に提出すること
です。離婚届には成人2名の証人の署名が必要ですが、夫婦以外の人であれば誰でもかまいません。なお、未成年の子が
いる場合には、離婚と同時に親権者の指定が必要で、これも離婚届に記載します(民法819条1項、戸籍法76条)。
離婚届に署名押印して相手に預けた後、届出前に気が変わったけれど、それにもかかわらず離婚届を提出されてしまう
ということがありえます。この場合、夫婦の一方の離婚意思が届出時点で存在していなかったことになり、離婚は無効
なのですが、いったん受理されてしまった後に効力を覆すには裁判の手続が必要になってしまいます。
それを防ぐためには、あらかじめ役所に不受理申出をしておく方法があります。
協議離婚で注意したいのは、離婚届提出後に、相手と話し合って決めたはずの約束事が守られずにトラブルになること
をできるだけ防止しておくということです。そのためには、トラブルになりそうな点は事前に十分話し合い、話し合った
内容を協議書にして残しておくことが有効です。とくにトラブルになりやすいのは、財産の問題(財産分与、養育費、
慰謝料)と子供の問題(親権、面接交渉)です。さらに、お金の約束については履行確保のため、公正証書で離婚協議書
を作成することが望ましいです。公正証書の執行認諾文言は債務名義となり、ただちに強制執行が可能となるためです。
【関連用語】
・調停離婚
・裁判離婚
・不受理申出
・財産分与
・養育費
・慰謝料
・親権
・面会交流
・公正証書
協議離婚の話し合いを弁護士を入れて進めれば、精神面の負担が軽減されるほか、冷静にお互いの条件をすり合わせつ
つ、重要な点の漏れを防止し、履行確保面でも最良の方法を目指すことができます。お悩みの方は是非ご相談ください。
【参考条文】
民法
(成年被後見人の婚姻)
第738条 成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない。
(婚姻の届出)
第739条第1項 婚姻は、戸籍法(昭和22年法律第224号)の定めるところにより届け出ることによって、
その効力を生ずる。
第2項 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で、又はこれらの者
から口頭で、しなければならない。
(詐欺又は強迫による婚姻の取消し)
第747条第1項 詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することが
できる。
第2項 前項の規定による取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後3箇月を
経過し、又は追認をしたときは、消滅する。
(協議上の離婚)
第763条 夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
(婚姻の規定の準用)
第764条 第738条、第739条及び第747条の規定は、協議上の離婚について準用する。
(離婚の届出の受理)
第765条第1項 離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第739条第2項の規定及び第819条第1項
の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
第2項 離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を
妨げられない。
(離婚又は認知の場合の親権者)
第819条第1項 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
戸籍法
第76条 離婚をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一親権者と定められる当事者の氏名及びその親権に服する子の氏名
二その他法務省令で定める事項
戸籍法施行規則
第57条第1項 戸籍法第七十六条第二号の事項は、次に掲げるものとする。
一協議上の離婚である旨
二当事者が外国人であるときは、その国籍
三当事者の父母の氏名及び父母との続柄並びに当事者が特別養子以外の養子であるときは、
養親の氏名
四同居を始めた年月
五別居した年月
六別居する前の住所
七別居する前の世帯の主な仕事及び国勢調査実施年の四月一日から翌年三月三十一日まで
の届出については、当事者の職業
八当事者の世帯主の氏名