【定義】
債務名義とは、請求権の存在と範囲を公に確認したことを証明する文書で強制執行の基礎とすることができるものです。
【解説】
お金の約束が実行されない場合にとれる手段として、相手の財産を差し押さえてもらうなどの強制執行がありますが、
手元に本人どうしで作成した借用証や協議書しかないような場合、それだけでは直ちに強制執行の申立てができません。
まず裁判所に訴えを起こして勝訴し、「被告は原告に〇〇万円支払え」などといった確定判決を取り、その確定判決を
債務名義として申し立てるなど、先に債務名義を取得する必要があるのです。
債務名義には確定判決のほか、仮執行宣言付判決(確定前にも執行できる判決)、確定判決と同一の効力を有するもの
(裁判で和解した場合の和解調書、家事調停の調書など)、執行証書などがあります(民事執行法22条)。このうち執行
証書は、公正証書に執行認諾文言を記載することで債務名義の効力を持たせることができるもので、合意の段階から将来
の不履行に備えて作成しておくことができる点に特徴があります。
お金の話し合いをするときには、履行確保の問題も合わせて検討しましょう。
弁護士を通した交渉により、最適な方法を選択しやすくなります。お気軽にお問い合わせください。
【参考条文】
民事執行法第22条
強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
一 確定判決
二 仮執行の宣言を付した判決
三 抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(確定しなければその効力を生じない裁判に
あつては、確定したものに限る。)
三の二 仮執行の宣言を付した損害賠償命令
三の三 仮執行の宣言を付した届出債権支払命令
四 仮執行の宣言を付した支払督促
四の二 訴訟費用、和解の費用若しくは非訟事件(他の法令の規定により非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一
号)の規定を準用することとされる事件を含む。)若しくは家事事件の手続の費用の負担の額を定める裁判所
書記官の処分又は第四十二条第四項に規定する執行費用及び返還すべき金銭の額を定める裁判所書記官の処分
(後者の処分にあつては、確定したものに限る。)
五 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人
が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」
という。)
六 確定した執行判決のある外国裁判所の判決
六の二 確定した執行決定のある仲裁判断
七 確定判決と同一の効力を有するもの(第三号に掲げる裁判を除く。)
(強制執行をすることができる者の範囲)