【定義】
調停委員とは、裁判官や調停官とともに調停委員会を構成する裁判所職員です。
【解説】
調停には民事調停と家事調停があり、調停委員にも民事調停委員と家事調停委員がありますが、以下では家事調停委員
について解説します。
調停は紛争当事者の間に公的機関が入って両者を合意による解決に導く手続ですが、この間に入る役割をする機関の
ことを調停機関といいます。調停機関は原則として調停委員会ですが、例外的に裁判官または調停官が単独で調停機関と
なることもできます(家事事件手続法247条)。調停委員会が行う調停を委員会調停、裁判官または調停官が単独で行う
調停を単独調停ということもあります。
調停委員会は、裁判官(または調停官)1名および調停委員2名以上で構成するとされています(同248条1項)。
調停委員員はこの構成員になる者としてあらかじめ任期2年の非常勤職員として任命され、事件ごとに担当を指定されて
います(同条2項)。
調停委員の任命資格は①弁護士資格を有する者、②家事・民事の紛争解決に有用な専門的知識経験を有する者、
③社会生活上豊富な知識経験を有する者とされています。年齢制限は原則として40歳以上70歳未満です。
調停では訴訟とは異なり、紛争の実情に沿った柔軟な解決が望まれることから、いわゆる市民感覚や多様な価値観を反映
させられるようにする趣旨で設けられた制度です。調停手続の進行は裁判官の指揮により行いますが(同259条)、調停委
員会内部で決議をする場合には、調停委員も裁判官と平等な議決権を持って多数決を行います(同248条3項)。
調停の当事者として裁判所に行くと、まずは調停委員の方と対面して事情や気持ちを伝えることになります。
離婚の調停では、通常は男女1人ずつの調停委員が指定されています。法律的にこちらに分があり、心情面でも共感しても
らえるケースでは、調停委員の相手方に対する説得などの働きかけで調停がまとまる可能性もあります。
もっとも、離婚はデリケートな家庭内部の問題であるためか、調停委員のちょっとした一言や態度で不信感を抱いてし
まう方もいるようです。その場合でも、調停委員には忌避制度がないため、担当を変えてもらうことはできません。
どうしても話し合いができない場合、納得のいかない調停条項で成立させるよりは、不成立または取下げとするしかない
と思われます。
離婚の調停をするべきかどうか、始まった調停への対応、調停委員との話のしかたなど、ご不安のある方は一度無料法律相談をご利用になってはいかがでしょうか。
名古屋駅前、春日井駅前で初回30分無料にて実施しております。お気軽にお問合せください。
【参考条文】
家事事件手続法
(調停機関)
第247条第1項 家庭裁判所は、調停委員会で調停を行う。ただし、家庭裁判所が相当と認めるときは、裁判官のみで行うことができる。
第2項 家庭裁判所は、当事者の申立てがあるときは、前項ただし書の規定にかかわらず、調停委員会で調停を行わなければならない。
(調停委員会)
第248条第1項 調停委員会は、裁判官一人及び家事調停委員二人以上で組織する。
第2項 調停委員会を組織する家事調停委員は、家庭裁判所が各事件について指定する。
第3項 調停委員会の決議は、過半数の意見による。可否同数の場合には、裁判官の決するところによる。
第4項 調停委員会の評議は、秘密とする。
(家事調停委員)
第249条第1項 家事調停委員は、非常勤とし、その任免に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
第2項 家事調停委員には、別に法律で定めるところにより手当を支給し、並びに最高裁判所規則で定める額の旅費、
日当及び宿泊料を支給する。
(調停委員会が行う家事調停の手続の指揮)
第259条 調停委員会が行う家事調停の手続は、調停委員会を組織する裁判官が指揮する。
(家事調停委員の専門的意見の聴取)
第264条第1項 調停委員会は、必要があると認めるときは、当該調停委員会を組織していない家事調停委員の専門的な
知識経験に基づく意見を聴取することができる。
第2項 前項の規定により意見を聴取する家事調停委員は、家庭裁判所が指定する。
第3項 前項の規定による指定を受けた家事調停委員は、調停委員会に出席して意見を述べるものとする。