【定義】
被害者側の過失とは、被害者と身分上ないし生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失のことです。
不法行為の過失相殺にあたり、被害者本人だけでなく被害者側の者の過失を考慮して賠償額を減額する考え方を被害者側の過失の法理といいます。
【解説】
民法722条2項は被害者に過失があった場合には不法行為の損害賠償の額を減額できることを定めており、これを過失相殺といいます。過失相殺は、そのような場合にまで加害者に全責任を負わせるのは酷だという公平の見地から認められています。
自分にも落ち度があった被害者に対するペナルティという趣旨ではないので、責任能力のない子供の過失であっても過失相殺が認められることがあるし、さらに被害者本人以外の者の過失であっても「被害者側」という一体関係が認められる限り考慮するのが公平にかなうと判例上考えられており、被害者側の過失の法理は実務上確立しています。
近年よく見られるのは、交通事故の同乗者による損害賠償請求に対する適用です。
過失割合が10:0ではない場合、同乗者に対しては両車両の運転者による共同不法行為が成立し、いずれかに対して
全額請求できるのが原則ですが、同乗者と運転者の間に一体関係が認められる場合にはその運転者の過失が被害者側の
過失として考慮され、結局過失割合に相当した部分しか相手車両の運転者に請求できない(分割責任になったのと同じ結果)こととなります。
この類型の判例を見ると、夫婦や内縁の夫婦は一体関係が肯定され(ただし破綻している場合を除く)、単なる恋人は否定されています。いわゆる「財布は一つ」といえる関係があるかどうかが実質的な判断基準と思われます。
【関連用語】
・共同不法行為
・不真正連帯債務
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【参考条文】
民法第722条第2項 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。