【定義】
抗弁とは、訴訟で被告が原告の主張に対して行う反論の一種で、原告の主張する事実と両立するが、その請求を成り立たなくさせる事実です。
【解説】
たとえば、貸金返還請求では、原告が被告にお金を貸した事実と返済期限が到来している事実があれば一応請求が成り立ちます。このように請求を成り立たせる最小限の事実を要件事実といいます。
これに対し、被告がすでに返済したという事実を主張したとします。返済の事実は上記要件事実と両立するが請求を成り立たなくさせる事実であり、抗弁にあたります。
民事訴訟では、要件事実の立証責任は原告にあり、抗弁の立証責任は被告にあります。立証責任とは、立証できなければその事実はないものと認定されるという意味です。
抗弁と似て非なるものが否認です。上記の例で、被告がお金を借りた事実を否定し、あれは贈与だったと主張したとすれば、それは要件事実と両立しない否認に当たります。
この場合、貸付の事実の立証責任はあくまでも原告にあります。否認と抗弁は当事者の主張を立証責任の観点から分類整理するための概念であって、実質的に反論としてどちらが有効かは状況によります。
浮気問題でよくみられる抗弁の例はいわゆる「破綻の抗弁」です。たとえば浮気相手への慰謝料請求にあたって自分と配偶者が結婚していること、配偶者が被告と不貞の関係を持ったことを主張するが、反論としてそれ以前に婚姻関係は破綻していたと主張されるケースです。
判例により婚姻関係が破綻している場合には慰謝料請求が認められないので、この主張は抗弁となり、立証されれば敗訴となります。
【関連用語】
・差押
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