【定義】
宥恕とは、相手を許すことです。
【解説】
宥恕は内心の出来事ですが、以下のように一定の法的な意味を持つことがあります。
①刑事事件の示談
刑事事件で被害者とかわす示談書の条項の一つに、「被害者は、被疑者を宥恕する。」といった文言を入れることがあります。犯行の悪質性や社会への影響、犯人の反省など処罰の重さを左右する諸要素を情状といいますが、被害者の処罰感情はその中でも重要な要素です。宥恕文言があるということは処罰感情が低いまたはないということですから、一般的には情状が良くなり、執行猶予などの軽い量刑につながったり、起訴前であれば不起訴になることもあります。もっとも、被害者が「宥恕」という日常用語ではない言い回しを理解していない可能性もあることに注意が必要です。
あとから「意味がわかっていなかった」と宥恕意思を覆されるよりは、最初から「厳しい処罰までは求めません。」と平易な文章で示談書を作成しておいた方がよい場合もあります。
②不貞をした配偶者を宥恕しながら相手を訴える場合
たとえば夫が不倫したので相手女性を訴えながら、夫自身は反省しているので今回だけ許して夫婦としてやり直していこうというケースは少なくないと思います。しかし裁判例をみると、この夫に対する宥恕は女性の慰謝料額に影響する可能性があります。夫と女性の責任は連帯責任ですが、その二人の間では夫の側の責任が重いと考えられており、その重い方が宥恕されているのに女性の責任に反映させないのは不公平だという判断があるようです。この場合の宥恕ははっきり表明されていなくても、同居を続けているとかその後妊娠したという事実から推測される例も見られます。
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