有責配偶者とは、夫婦の婚姻関係を破たんさせる離婚原因を作った配偶者(夫・妻)のことをいいます。
離婚裁判で、離婚が認められるためには、民法770条第1項に定める離婚原因(用語集:「離婚原因」へ)が必要です。
有責配偶者の具体例として、浮気・不倫・不貞をした配偶者(同項1号)、悪意の遺棄をした配偶者(同項2号)、家庭内暴力(DV)などの婚姻を継続しがたい重大な行為をした配偶者(同高5号)などがあります。
裁判所は、自らが原因となって婚姻関係を破たんさせた配偶者から離婚を請求された場合に、それを認めるのか、認めてよいのかという問題があります。「有責配偶者からの離婚請求」と呼ばれる問題です。
この点の問題について、最高裁判所は、昭和62年9月2日の判決で、離婚原因を作った有責配偶者からの離婚請求は、信義に反するため、裁判上では原則として認めらないとしました。ただし、例外的に、夫婦が相当長期間にわたって別居しており、夫婦間に未成熟子がおらず、離婚を認めることで相手方配偶者が精神的、社会的、経済的に過酷な状況におかれるようなことはない場合、裁判での離婚を認めるとしました。
この最高裁判所の判例は、有責配偶者から離婚請求があった場合には、現在でも、裁判実務における基本的な判断基準となっています。
【参考条文】
民法第770条
第1項 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
①配偶者に不貞な行為があったとき。
②配偶者から悪意で遺棄されたとき。
③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。