【定義】
不受理申出とは、離婚届などの一定の身分関係の届出を受理しないようにあらかじめ役所に申し出ておく制度です。
【解説】
不受理申出は、婚姻、離婚、養子縁組、離縁、認知の5種類の届出について認められています(戸籍法27条の2第3項)。
これらの届出は当事者の話し合いと届出だけで成立させることができますが、片方にその意思がないのに虚偽の届出が出
されてしまうケースや、届書の作成後に気が変わってしまったのに勝手に届出を出されてしまうケースがありえます。
このような場合、後から裁判を起こして無効を主張するのは大変なので、あらかじめ受理を防止することができると便利です。
そこで、不受理申出の制度が生まれました。当初は行政の運用レベルでの取扱いでしたが、長年利用されてきた実績があ
り、平成20年の戸籍法改正の際に条文に取り入れられ(同法27条の2)、法制度化されました。
不受理申出を行うには、原則として本人が本籍地の役所に出頭して書類を提出する必要があります。自治体により細かい点は異なる場合がありますので、提出先にお問
い合わせください。
不受理申出が受理されると、その後に提出された対象の届出(離婚届など)は、不受理申出をした本人が行う場合を除
き、不受理となります(同条4項)。
そして、対象の届出があったことを不受理申出をした者に対し通知します(同条5項)。
なお、平成20年4月30日以前は、不受理申出に最大6か月間の期限が存在しましたが、戸籍法改正に伴い平成20年5月1日以降の不受理申出はすべて無期限となりました。
その代り、別途取下書を提出することで不受理の扱いを解除することができます。
【関連用語】
・協議離婚
・離婚無効
離婚届に判を押して相手に渡してしまったがもう少し考えたい、大事な点の話し合いが決まってから提出してもらいたい
などの場合、不受理申出が役に立つ可能性があります。お気軽にご相談ください。
【参考条文】
戸籍法第27条の2第1項 市町村長は、届出によつて効力を生ずべき認知、縁組、離縁、婚姻又は離婚の届出(以下この条
において「縁組等の届出」という。)が市役所又は町村役場に出頭した者によつてされる場合に
は、当該出頭した者に対し、法務省令で定めるところにより、当該出頭した者が届出事件の本人
(認知にあつては認知する者、民法第七百九十七条第一項に規定する縁組にあつては養親となる
者及び養子となる者の法定代理人、同法第八百十一条第二項に規定する離縁にあつては養親及び
養子の法定代理人となるべき者とする。次項及び第三項において同じ。)であるかどうかの確認
をするため、当該出頭した者を特定するために必要な氏名その他の法務省令で定める事項を示す
運転免許証その他の資料の提供又はこれらの事項についての説明を求めるものとする。
第2項 市町村長は、縁組等の届出があつた場合において、届出事件の本人のうちに、前項の規定による
措置によつては市役所又は町村役場に出頭して届け出たことを確認することができない者がある
ときは、当該縁組等の届出を受理した後遅滞なく、その者に対し、法務省令で定める方法により
当該縁組等の届出を受理したことを通知しなければならない。
第3項 何人も、その本籍地の市町村長に対し、あらかじめ、法務省令で定める方法により、自らを届出
事件の本人とする縁組等の届出がされた場合であつても、自らが市役所又は町村役場に出頭して
届け出たことを第一項の規定による措置により確認することができないときは当該縁組等の届出
を受理しないよう申し出ることができる。
第4項 市町村長は、前項の規定による申出に係る縁組等の届出があつた場合において、当該申出をした
者が市役所又は町村役場に出頭して届け出たことを第一項の規定による措置により確認すること
ができなかつたときは、当該縁組等の届出を受理することができない。
第5項 市町村長は、前項の規定により縁組等の届出を受理することができなかつた場合は、遅滞なく、
第三項の規定による申出をした者に対し、法務省令で定める方法により、当該縁組等の届出が
あったことを通知しなければならない。