【定義】
調停前置主義とは、訴訟の前に必ず調停で話し合いによる解決を試みなければならないとするルールのことです。
【解説】
調停と訴訟はどちらも紛争解決のための公的な制度ですが、解決の手法は大きく異なります。訴訟は互いの主張を
裏付ける証拠を提出させ、事実を認定して法律をあてはめ、結論として片方の主張を認めて他方を排斥するという形で
決着をつけます。
これに対して調停はあくまでも話し合いであり、公的機関が間に入って対立を和らげながら、法律のルールにも必ずしも
とらわれず、双方の合意による落着を目指すものです。したがって、調停の方が柔軟な解決が得られやすく、当事者の
将来の人間関係にも配慮することが可能といえます。
調停前置主義が採用されているのは、離婚その他の家庭問題(家事事件手続法257条1項)と、不動産の賃貸借で家賃の値上げ・値下げに関するトラブルです(民事調停法24条の2第1項)。
このような紛争類型の特徴として、当事者同士に継続的で密接な関係があり、トラブルが解決した後もその関係が続いて
いくということがあります。したがって、法律で白黒はっきりさせる訴訟よりも調停を通じて双方が納得のいく解決がで
きることが望ましいため、先に一度調停を経ることが強制されているのです。
調停前置主義が定められている紛争類型について、いきなり訴訟を提起してしまった場合、裁判所が職権で調停に付す
「付調停」という措置がとられます(家事事件手続法257条2項本文、民事調停法24条の2第2項本文)。ただし例外的に、
付調停が相当でないと思われる場合にはそのまま訴訟を進めてよいことになっています(家事事件手続法257条2項但書、
民事調停法24条の2第2項但書)。離婚の場合、この例外に該当するケースとして、相手方が行方不明、相手方が精神障害
等により話し合いが不可能、相手方がかたくなに調停を拒んでいて調停を実施しても無駄に終わる可能性が極めて高い、などがあげられます。
調停前置主義にしたがって調停をしたが不成立に終わったので離婚訴訟を提起したいという場合、調停前置を証明する
ために調停不成立証明書を取得し、訴訟の際に提出する必要があります。
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【参考条文】
家事事件手続法
(調停前置主義)
第257条第1項 第二百四十四条の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず
家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。
第2項 前項の事件について家事調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、裁判所は、職権で、
事件を家事調停に付さなければならない。ただし、裁判所が事件を調停に付することが相当でないと
認めるときは、この限りでない。
第3項 裁判所は、前項の規定により事件を調停に付する場合においては、事件を管轄権を有する家庭裁判所に
処理させなければならない。ただし、家事調停事件を処理するために特に必要があると認めるときは、
事件管轄権を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所に処理させることができる。