【定義】
家事調停官とは、弁護士の中から任命される非常勤の裁判官で、家事調停において裁判官と同じ役割をします。
【解説】
家事調停は、調停委員会が当事者の間に入る形で進められます。調停委員会は2名の調停委員と1名の裁判官から
構成されるのが通常ですが、事件によっては常勤裁判官の代わりに家事調停官が担当することがあります。
家事調停官の任命資格は、弁護士として5年以上の職務経験があることです(家事事件手続法250条1項)。
非常勤で(同条4項)、特定の家庭裁判所に週に1度登庁して担当の事件を処理します(同250条2項、251条1項)。
家事調停に関して裁判官と同じ権限を持ち(同条2項)、常勤裁判官の指示を仰ぐなどすることなく、独立して職務を行い
ます(同条3項)。任期は2年とされ(同250条2項)、その間は一定の事由がない限り意に反して解任されることがないという身分保障があります(同条5項)。
家事調停官は、弁護士の多用な実務経験を生かした調停の運営により、家庭裁判所の機能を充実強化する目的で、
平成15年に導入された制度です。その後、平成23年に家事審判法が家事事件手続法に改正された際も、そのまま引き継がれています。
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【参考条文】
家事事件手続法
(家事調停官の任命等)
第250条第1項 家事調停官は、弁護士で五年以上その職にあったもののうちから、最高裁判所が任命する。
第2項 家事調停官は、この法律の定めるところにより、家事調停事件の処理に必要な職務を行う。
第3項 家事調停官は、任期を二年とし、再任されることができる。
第4項 家事調停官は、非常勤とする。
第5項 家事調停官は、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、在任中、その意に反して解任される
ことがない。
一弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第七条各号のいずれかに該当するに至ったとき。
二心身の故障のため職務の執行ができないと認められたとき。
三職務上の義務違反その他家事調停官たるに適しない非行があると認められたとき。
第6項 この法律に定めるもののほか、家事調停官の任免に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
(家事調停官の権限等)
第251条第1項 家事調停官は、家庭裁判所の指定を受けて、家事調停事件を取り扱う。
第2項 家事調停官は、その取り扱う家事調停事件の処理について、この法律において家庭裁判所、裁判官
又は裁判長が行うものとして定める家事調停事件の処理に関する権限を行うことができる。
第3項 家事調停官は、独立してその職権を行う。
第4項 家事調停官は、その権限を行うについて、裁判所書記官、家庭裁判所調査官及び医師である裁判所
技官に対し、その職務に関し必要な命令をすることができる。この場合において、裁判所法(昭和
二十二年法律第五十九号)第六十条第五項の規定は、家事調停官の命令を受けた裁判所書記官に
ついて準用する。
第5項 家事調停官には、別に法律で定めるところにより手当を支給し、並びに最高裁判所規則で定める額の
旅費、日当及び宿泊料を支給する。