【定義】
公正証書とは、公証人が作成する証書です。
【解説】
公証人は準公務員であって、私人が行った法律行為その他の権利義務に関する事実について公正証書を作成することができます(公証人法1条)。公正証書には内容の正確性や当事者の意思確認などの面で高い信用力があり、合意の存在や内容を示す証拠としては最も強い証明力があるといえます。また、原本は公証役場に保管されます。
さらに特殊な効果として、金銭支払いを内容とする条項に執行認諾文言(ただちに強制執行されても異議がないという文言)を付すことで、ただちに強制執行に移れる債務名義としての効力を持たせることもでき、これを執行証書といいます(民事執行法22条5号)。
公正証書を作成するには、当事者同士で内容を決めた後、公証人に相談して日程を決め、公証役場に赴いて調印します(代理人でも可)。法律行為の目的の価額(支払いを約束する金額)に応じて手数料が発生します。
不貞の慰謝料に関して示談・和解で解決する場合、公正証書を作成することがあります。とくに慰謝料を分割で支払う約束を執行証書にしておくことで強力な履行確保となり、約束通り支払ってもらえる可能性が高まります。
相手方との交渉、公証役場との相談・調整も弁護士が代理人として承ります。お悩みの方はお気軽にご相談ください。
【参考条文】
公証人法第1条 公証人ハ当事者其ノ他ノ関係人ノ嘱託ニ因リ左ノ事務ヲ行フ権限ヲ有ス
一 法律行為其ノ他私権ニ関スル事実ニ付公正証書ヲ作成スルコト
二 私署証書ニ認証ヲ与フルコト
三 会社法(平成十七年法律第八十六号)第三十条第一項及其ノ準用規定並一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八)第十三条及第百五十五条ノ規定ニ依リ定款ニ認証ヲ与フルコト
四 電磁的記録(電子的方式、磁気的方式其ノ他人ノ知覚ヲ以テ認識スルコト能ハザル方式(以下電磁的方式ト称ス)ニ依リ作ラルル記録ニシテ電子計算機ニ依ル情報処理ノ用ニ供セラルルモノヲ謂フ以下之ニ同ジ)ニ認証ヲ与フルコト但シ公務員ガ職務上作成シタル電磁的記録以外ノモノニ与フル場合ニ限ル
民事執行法第22条 強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行
う。
一 確定判決
二 仮執行の宣言を付した判決
三 抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(確定しなければその効力を生じない裁判にあつては、確定したものに限る。)
三の二 仮執行の宣言を付した損害賠償命令
三の三 仮執行の宣言を付した届出債権支払命令
四 仮執行の宣言を付した支払督促
四の二 訴訟費用、和解の費用若しくは非訟事件(他の法令の規定により非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)の規定を準用することとされる事件を含む。)、家事事件若しくは国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(平成二十五年法律第四十八号)第二十九条に規定する子の返還に関する事件の手続の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分又は第四十二条第四項に規定する執行費用及び返還すべき金銭の額を定める裁判所書記官の処分(後者の処分にあつては、確定したものに限る。)
五 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)
六 確定した執行判決のある外国裁判所の判決
六の二 確定した執行決定のある仲裁判断
七 確定判決と同一の効力を有するもの(第三号に掲げる裁判を除く。)