ダブル不倫が発覚した後、双方の夫婦が離婚せずに婚姻関係が継続して配偶者と家計が一体である場合、慰謝料をお互いに請求することになると、実質的にはプラスマイナスゼロやそれに近い結果になる可能性があり、経済的に請求する意味がないと思えるケースがあります。
しかし、以下のようなケースでは意味があります。
1 ダブル不倫が発覚した後、婚姻関係が破綻して配偶者と家計が一体でなくなった場合(離婚する場合など)
2 ダブル不倫が発覚した後も婚姻関係が継続して配偶者と家計が一体である場合
① 不貞相手の配偶者が慰謝料を請求してこない可能性があるケース
② ご自身の配偶者が夫婦共有財産以外の財産から慰謝料を支払うケース
③ 慰謝料の支払いについて取り決めをする際に不貞相手から配偶者との接触禁止等の約束を取り付けることによって、ダブル不倫を止めさせたいケース
など
1.慰謝料請求を無視し続けた場合
ダブル不倫とは、婚姻している者同士が不貞行為をすることです。この不貞行為によって、互いに相手の配偶者に対する不法行為が成立し、慰謝料の支払義務を負います。
例えば、甲夫婦の夫と乙夫婦の妻によるダブル不倫という事例で考えると、甲夫と乙妻が共同不法行為の加害者であり、連帯して慰謝料を支払う責任を負います。
甲妻と乙夫はいずれも被害者であり、それぞれ甲夫と乙妻のどちらに対しても慰謝料を請求することができます。
ただ、甲妻から甲夫への請求、乙夫から乙妻への請求は夫婦間の問題で表に出ないのが通常であるため、甲妻から乙妻への請求と乙夫から甲夫への請求とが表に出てきます。
この二つの請求はまったく別個のものであり、甲妻と乙夫はそれぞれ独自に、請求するかどうかや、示談するかどうかなどを判断してかまいません。
2.ダブル不倫によって配偶者と家計が一体でなくなった場合
ダブル不倫によって婚姻関係が破綻して家計が一体でなくなった場合(配偶者と離婚する場合など)、ご自身の慰謝料を不貞相手に請求できる一方、不貞相手の配偶者による自身の配偶者への慰謝料請求については、家計を原資として慰謝料を支払う必要はありません。
そのため、ダブル不倫であっても、不貞相手に対して慰謝料を請求する意味があります。
3.ダブル不倫後も配偶者と家計が一体である場合
ダブル不倫が発覚した後も、婚姻関係を継続して家計が一体である場合には、慰謝料を家計から支払うことが多いため、結局、甲夫婦の家計と乙夫婦の家計とで慰謝料の交換をすることになり、実質的にはプラスマイナスゼロやそれに近い結果になる可能性もあります。
そのため、関係者4名全員で交渉した上で4者間和解を締結し、互いに0円の負担で解決することもあります。
しかし、次のような場合には、不貞相手に慰謝料を請求する意味があります。
①不貞相手の配偶者が慰謝料請求してこないこともある
ダブル不倫が発覚した後も、婚姻関係を継続して家計が一体である場合には、慰謝料を家計から支払うことが多いため、結局、甲夫婦の家計と乙夫婦の家計とで慰謝料の交換をすることになり、実質的にはプラスマイナスゼロやそれに近い結果になる可能性もあります。
そのため、関係者4名全員で交渉した上で4者間和解を締結し、互いに0円の負担で解決することもあります。
しかし、次のような場合には、不貞相手に慰謝料を請求する意味があります。
②慰謝料を夫婦共有財産以外から支払う場合には、プラスマイナスゼロとはならない
不貞をした配偶者が夫婦共有財産以外、たとえば婚姻前に形成した財産から支払う場合があります。
このような場合には4者間和解の打診があっても応じる必要はなく、自らの請求権のみ行使し、相手側の請求には関知しないという態度を取ることが考えられます。
③実質ゼロであっても法的解決をしておいた方がよい
実質ゼロでの解決になるとしても、現に判明している不法行為について示談による法的解決をしておくことが望ましい場合が多いです。
発生している債権債務を清算するだけでなく、関係解消の約束等によって不倫関係を止めさせる意味もあるからです。
また、自分はダブル不倫の関係に気づいたが、相手配偶者がダブル不倫の関係に気付いていない場合も考えられます。
この場合、自分の請求権のみ3年の消滅時効が進行するため、相手配偶者が気づいて請求してきた時には自分の慰謝料請求が認められないという事態もありえます。
このような場合も4者間で債権債務を清算する意味があります。