妊娠中であったことで慰謝料が大幅に高額になるとはいえませんが、具体的事情により、増額事由として考慮される可能性もあります。
1.慰謝料の相場と増額要素
配偶者が不貞行為をした場合、原則として不貞相手に慰謝料を請求することができます。その金額は具体的な事情によって大きな幅があり、裁判で認められるのは数十万円から数百万円です。考慮される事情の中では、不貞が原因で離婚したかどうか等円満だった夫婦関係が破綻したのかどうかという点が重要です。
たとえば離婚に至ったケースでは150万円~300万円程度が認められることもある一方、配偶者を許してやり直す選択をしたケースでは50万円~100万円程度にとどまります。
さらに、不貞関係の期間、不貞行為の頻度、婚姻期間、夫婦間における未成熟子の存在などが影響します。精神的苦痛が大きいと評価され、慰謝料を増額させる方向で考慮される要素のことを、増額事由といいます。
2.原告(妻)が妊娠中であった場合
妊娠中であったことは一般的に増額事由とは考えられておらず、妊娠中だったからといってただちに慰謝料が高額になるとはいえませんが、具体的事情によっては、増額につながることも考えられます。
妊娠や出産は、通常は夫婦関係が円満であることを示す事情の一つであり、円満な状態から不貞によって婚姻関係の平穏が侵害された状態への落差が大きいほど、精神的苦痛は大きいと評価されやすくなります。
被告側からの破綻の抗弁(不貞以前から婚姻関係は破綻していたから不法行為にならないという主張)に対する反論もしやすいと思われます。