慰謝料を請求するという内容の書面に回答をする場合、タイトルは「回答書」とするのが一般的です。内容は
・減額を求める
・事実を争い、支払いは拒否する
などこちらの主張の趣旨を簡潔に記載するのがよいでしょう。
事実を認める場合、以後の交渉は当然それを前提に進み、もし裁判になれば認めている証拠として使われる可能性もあることには注意が必要です。判断に迷う場合、回答する前に弁護士に相談することをお勧めします。
解説
1.内容証明郵便とは
郵便局が行っている制度で、送る文書の内容のコピーを郵便局で保管することによって、内容を後から証明できるようにするサービスです。たとえば請求をしたことや契約の解除をしたことなど、法律行為にはその有無とタイミングに重要な意味がある場合が多いです。内容証明郵便を使うと、ある時点で一定の内容の通知等をしたことを後から証明できます。
2.内容証明郵便への回答義務はあるか
内容証明郵便であることの効果は、上述の証明力の点のみです。裁判外の請求であるという点においては、通常の郵便による請求、メールによる請求、電話による請求、対面しての口頭による請求等と変わりません。通常の手紙に回答義務がないのと同様に、内容証明郵便だからといって回答するべき法律上の義務はありません。無視しても、違法ではありません。
ただし、無視した場合には訴訟を起こされる可能性があります。訴訟で最終的に慰謝料が認められる場合、不誠実な対応をしたことが原因で慰謝料が高くなる可能性もあります。訴訟まで無視し続けるとどうなるかについては、下記記事をご参照ください。
よくあるご質問「慰謝料請求を無視し続けるとどうなりますか。」
3.弁護士からの請求だったら
相手が弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人として慰謝料請求してきます。事前に何の連絡もなく、いきなり弁護士からの内容証明が届くことも珍しくありません。
では、弁護士の請求に対してはどう対応すればよいでしょうか。弁護士は依頼者の正当な利益を実現する職責を負っているため、不当な請求には手を貸しません。しかし、それは必ずしも、弁護士ならば裁判で認められる可能性が高い請求だけしてくるということではありません。依頼者の希望に答えて高額な請求をしてくることもありますし、依頼者が弁護士に正しい事情説明をしていないこともありえます。したがって、結果的に不相当な請求になっていることがあります。
そのような請求に対しては、反論すべきです。少なくとも、弁護士からの請求だからといって言うとおりに対応する必要はありません。説得的に反論するためには、弁護士に相談することをお勧めします。
4.回答書の書き方
慰謝料請求された側は、基本的に内容証明郵便を使う必要はありません。通常の書面でよく、ワープロで作成してプリントアウトしたものを郵送すれば十分です。
基本的な書き方として、日付、宛名、自分の氏名を表示します。以下は書面の形式の例です。
回答書 令和〇年〇月〇日 〇〇〇〇氏代理人弁護士〇〇〇〇殿 〇〇〇〇(自分) 前略 |
5.回答書の文例
(1)事実を争わず、金額を交渉する場合
事実を争わない場合でも、必ずしも具体的に事実を記載したり長々と謝罪を述べる必要はありません。相手にもよりますが、かえって感情を逆なでする場合もあります。簡潔に、争わない姿勢や誠意をもって解決する姿勢を見せることができればよいでしょう。
例①:お金がなくて払えない場合の例
「この度は、ご迷惑をおかけいたしました。当方の経済的な事情により、ご請求の金額の用立てが困難です。〇〇万円であれば〇月〇日までにお支払い可能なのですが、この金額で解決していただくことは難しいでしょうか。また、お支払いする際には事前に示談書の取り交わしをさせてください。」
例②:相場に照らして高額な場合の例
「この度は、ご迷惑をおかけいたしました。慰謝料の金額ですが、〇〇円であれば〇月〇日までにお支払いする準備がございます。相場に照らしましても、相当な金額ではないかと考えております。また、お支払いする際には事前に示談書の取り交わしをさせてください。」
(2)事実を争い、支払いを拒否する場合
請求に理由がなく、証拠上も有利と考えられる場合、回答はせずに、訴訟を起こされてから訴訟上で反論するという方法も考えられます。あえて回答書で回答をする場合には、反論の要点を相手に伝えられる内容が望ましいでしょう。そのため、法的に整理された必要十分な内容を簡潔に記載することが重要です。このような文面にするためには、弁護士のアドバイスを受けた方がよいです。
例①:不貞がなかった場合の例
「私が〇〇〇〇氏と『令和〇年〇月ころから不貞の関係を持った』との事実はありません。〇〇〇〇氏とは仕事上の付き合いがあるだけです。従いまして、ご請求には応じられません。」
例②:既婚と知らなかった場合の例
「〇〇〇〇氏は未婚と認識しております。ご結婚されているとはまったく存じませんでした。従いまして、ご請求には応じられません。」
例③:相手夫婦が破綻していた場合の例
「〇〇〇〇氏と〇〇〇〇氏は令和〇年〇月ころから別居をされており、いわゆる破綻の状態にありましたので、私と〇〇〇〇氏の関係により、〇〇〇〇氏に対する慰謝料が発生する状況ではなかったはずです。従いまして、ご請求には応じられません。」
各種文例をご紹介しましたが、あくまでも一般的に見られるケースへの対応の一例にすぎません。具体的事案によっては、この通りに書かない方がよい場合もあり、ベストな対応は千差万別です。慰謝料請求された場合には、早急に弁護士にご相談ください。