慰謝料として相当な金額である限り、所得税その他の税金はかかりません。
1.慰謝料は非課税所得
日本国内の居住者は原則としてすべての所得について所得税を納めなければなりませんが、例外として、一部の所得についてはさまざまな政策的目的から非課税所得と定められており、所得税がかからない扱いとされています(所得税法9条)。
そして非課税所得に、損害賠償金も含まれます。
(非課税所得) 所得税法9条1項 18 保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第四項(定義)に規定する損害保険会社又は同条第九項に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの |
慰謝料は精神的苦痛に対する損害賠償金であり、「心身に加えられた損害に基因して取得する損害賠償金」に当たるため、非課税所得となります。したがって、受け取った慰謝料について確定申告をする必要もありません。
もっとも、慰謝料の名目で実質的には贈与や雑所得・一時所得となる金銭が含まれている場合には、その部分については課税されることになります。当事者が慰謝料のつもりでも、金額が相当な金額を超えている場合には、課税される可能性があるので注意が必要です。
2.相当な金額を超える慰謝料とは
受け取った慰謝料の金額が相当な金額を超えているかどうかは、事案の内容によります。たとえば、不貞が理由で離婚に至ったケースでは慰謝料の相場は数十万円~500万円と言われています(ただし、事案によって相当とされる慰謝料の金額は大きく異なるため、必ずこの金額の範囲内にとどまるものではありません。)が、それを大幅に超えていれば相当な金額を超えていると判断される可能性があります。
判例では、不貞慰謝料ではなくセクハラ被害に関する慰謝料の事例ですが、慰謝料として受け取った1億円について全部を非課税所得として申告しなかったところ更生処分を受け無申告加算税を課された事案について、慰謝料として相当な金額は1000万円を超えず、その他は一時所得ないし雑所得に当たるとして、処分は適法だと判断したものがあります(福岡高裁平成18年11月28日判決)。