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慰謝料問題の弁護士コラム

職場不倫のケースで、勤務先に使用者責任を追及できるか?

1.職場不倫が発覚した場合に会社は責任を負うのか?

夫の浮気相手が夫と同じ会社で働く人物であった場合、その会社に対して責任を追及することはできるのでしょうか?

勤務先に対して慰謝料を請求したり、浮気相手の女性を退職させるように請求することはできるのでしょうか?

今回の記事では、「夫が職場で不倫をした場合の勤務先の責任」について解説します。

2.「使用者責任」とは何か?

まず、「そもそも会社は従業員の行為について責任を負うのか?」という点を考えてみましょう。

会社は、従業員が第三者に損害を与えた場合には、その損害を賠償する責任を負います。
これを「使用者責任」と呼びます。


例えば、ビルの建築現場で、作業員が通行人にケガをさせた場合には、その会社は治療費を支払わなければいけません。
このように、従業員が業務を行ううえで第三者に損害を与えた場合は、会社が損害を賠償する責任を負います。

ここでのポイントは、「会社が責任を負うのは、従業員の仕事中の行為に限定されている」ということです。
つまり「従業員のプライベートでの行為」については、会社は責任を負いません。

例えば、従業員が週末に家族旅行でドライブに行き、そこで交通事故を起こしたとしても、会社は責任を負いません。
このようなプライベートの事故は、「仕事中の行為」とは言えないからです。

 

3.職場不倫は「仕事中の行為」と言えるのか?

それでは、職場不倫は「仕事中に行った行為」と言えるのでしょうか?
不倫や浮気は、基本的には業務に関係のない行為です。仕事が終わった後に2人で逢瀬を重ねることは、従業員のプライベートの行為です。


浮気相手が職場内の人物であったとしても、会社が業務命令として不倫を指示したというような特殊な状況でない限り、「仕事の一環として不倫が行われた」とは言えません。

よって、浮気相手が職場内の人物であるという理由だけでは、勤務先に対して使用者責任を追及することはできません。慰謝料を請求することもできません。

 

4.浮気相手の女性を退職させることはできるか

勤務先に慰謝料を支払ってもらうことができなくても、「せめて夫と浮気相手が同じ職場で働き続けることだけは止めてほしい」と考える方がいらっしゃるかもしれません。

このような場合、夫の勤務先に対して浮気相手の女性の退職を求めることはできるのでしょうか?
職場での不祥事が発覚した場合、企業は就業規則に従って従業員を懲戒することができます。
懲戒には「けん責、減給、出席停止、懲戒解雇」などの種類があります。

もちろん、職場不倫が発覚したからといって、必ずしも懲戒事由に該当するとは限りません。
会社が従業員を懲戒できるのは、「不倫によって業務に支障が出ている場合」に限られます。

浮気相手の女性を退職させることができるかは、「職場不倫によってどれほど業務が停滞したか」、
「不倫によっていかに重大な支障が出ているか」によって決まります。
会社が不当に重い懲戒処分を下してしまうと、今度は会社の責任問題となります。

つまり、不倫相手の女性を懲戒するかどうかは、会社側に広い裁量があります。
会社の義務ではありません。もしもあなたが、浮気相手の女性をクビにするように会社に執拗に迫ってしまうと、
業務妨害罪や脅迫罪、強要罪に該当するおそれがあります。

また、夫の勤務先に対して不倫を告発する怪文書を送るような行為は、名誉毀損やプライバシー侵害に該当するおそれもありますので気を付けましょう。

 

5.まとめ

夫の浮気相手が夫と同じ職場に勤務する人物であったとしても、不倫が仕事の一環として行われたという特殊な事情でない限りは、職場に対して慰謝料を請求することはできません。

職場不倫によって業務に支障が出ている場合は、会社は不倫した人物を懲戒することができます。

ただし会社の義務ではありません。夫の勤務先に対して浮気相手の女性をクビにするように執拗に迫る行為は、業務妨害罪や脅迫罪、強要罪に該当するおそれがありますので気を付けましょう。

 

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