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用語集

家事審判(かじしんぱん) | 浮気・不倫・不貞・離婚の慰謝料の用語集

【定義】
家事審判とは、家事事件手続法に審判事項として掲げられた事項について、家庭裁判所が行う裁判です。

【解説】
 家事審判の対象となるのは、家事事件手続法別表第一と別表第二に掲げられている事項です(家事事件手続法39条)。その数は、合わせて150項目以上に上ります。

 別表第一と第二に分けられている理由は、事件の性質の違いにあります。
別表第一の事項は後見開始(1項)、子の氏の変更についての許可(60項)、相続放棄の申述の受理(95項)、
遺言書の検認(103項)など、当事者同士の争いという性質はないが、公益性が強いため裁判所が関与することになっている事項です。

 それに対し別表第二の事項は婚姻費用の分担に関する処分(2項)、子の監護に関する処分(3項)、財産の分与に関す
る処分(4項)、遺産の分割(12項)など、対立する当事者が存在する事項です。
これらは当事者同士の話し合いで解決できないときに裁判所に持ち込まれるもので、審判が紛争解決の機能を果たすことになる側面があります。その面では通常の民事訴訟や人事訴訟と目的を同じくすることになります。

 しかし、審判は訴訟と異なり、非公開で(同33条)、本人出頭を原則とし(51条2項)、当事者が提出した証拠だけに
拘束されず裁判所が積極的に事実の調査を行ってよいという職権探知主義を採用しています(同56条)。
当事者の主張に法律を適用して白黒はっきりつけるだけでは十分な解決とはいえず、裁判所が諸事情を勘案して調整する
ようなかかわり方をする必要があるという親族・相続問題の特殊性によるものです。

 別表第二事件は、上記のような性質を持つことから、当事者の合意で解決できるならばそのほうがよく、審判の途中でも調停に付される場合があります(同274条)。

 なお、離婚は審判事項に入っていないため、離婚をテーマとして審判を申し立てることはできません。「審判離婚」という言葉がありますが、それは調停から移行する特殊な審判(調停に代わる審判)で成立する離婚のことです。

 審判を起こすには、家事審判申立書を家庭裁判所に提出します。どこの家庭裁判所に提出すべきかという管轄は事件の種類ごとに定めがあり、たとえば遺産分割であれば相続の開始した地(同191条)、婚姻費用分担であれば夫または妻の住所地(同150条)となります。家事事件手続法により、別表第二事件では相手方との合意により都合のいい場所を指定する合意管轄も認められるようになりました(66条)。
また、別表第二事件では、申立書の写しが原則として相手方に送付されるので注意が必要です(同67条1項)。

 審判の具体的手続は、やはり事件の種類ごとに定めがありますが、共通する流れとして、裁判所が職権探知的に事実の調査や証拠調べをし(同56条)、判断ができる状態になれば審判をします(同73条)。

事実の調査とは、審問期日を開いて当事者の陳述を聴いたり、家庭裁判所調査官に調査をさせたり(同58条)、官公庁・金融機関に調査を嘱託したりするものです(同62条)。

証拠調べは訴訟と同様に証人尋問などを行うものです(同64条)。審判は当事者等に告知され(同74条1項)、即時抗告できるものについては即時抗告期間の満了により、即時抗告できないものについてはただちに確定します(同条2項、4項)。確定すると債務名義として強制執行できるなどの効力が発生します(75条)。審判に不服がある場合に即時抗告ができるかどうかは、事件の種類ごとに定めがあります。

たとえば、婚姻費用分担や財産分与、子の監護に関する審判に対しては即時抗告ができるとの規定があります(同156条)。即時抗告の期間は2週間です(同86条1項)。

【関連用語】
家事事件手続法
家事調停
審判離婚
・管轄

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【参考条文】
家事審判法
(審判事項)
第39条 家庭裁判所は、この編に定めるところにより、別表第一及び別表第二に掲げる事項並びに同編に定める事項について、審判をする。

(申立ての方式等)
第49条第1項 家事審判の申立ては、申立書(以下「家事審判の申立書」という。)を家庭裁判所に提出してしなければならない。
第2項 家事審判の申立書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一当事者及び法定代理人
二申立ての趣旨及び理由
第3項 申立人は、二以上の事項について審判を求める場合において、これらの事項についての家事審判の手続が同種であり、これらの事項が同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、一の申立てにより求めることができる。
第4項 家事審判の申立書が第二項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い家事審判の申立ての手数料を納付しない場合も、同様とする。
第5項 前項の場合において、申立人が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、家事審判の申立書を却下しなければならない。
第6項 前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。

(事件の関係人の呼出し)

第51条第1項 家庭裁判所は、家事審判の手続の期日に事件の関係人を呼び出すことができる。
第2項 呼出しを受けた事件の関係人は、家事審判の手続の期日に出頭しなければならない。ただし、やむを得ない事由があるときは、代理人を出頭させることができる。
第3項 前項の事件の関係人が正当な理由なく出頭しないときは、家庭裁判所は、五万円以下の過料に処する。

(事実の調査及び証拠調べ等)
第56条第1項 家庭裁判所は、職権で事実の調査をし、かつ、申立てにより又は職権で、必要と認める証拠調べをしなければならない。
第2項 当事者は、適切かつ迅速な審理及び審判の実現のため、事実の調査及び証拠調べに協力するものとする。

(家庭裁判所調査官による事実の調査)
第58条第1項 家庭裁判所は、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせることができる。
第2項 急迫の事情があるときは、裁判長が、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせることができる。
第3項 家庭裁判所調査官は、事実の調査の結果を書面又は口頭で家庭裁判所に報告するものとする。
第4項 家庭裁判所調査官は、前項の規定による報告に意見を付することができる。

(調査の嘱託等)
第62条 家庭裁判所は、必要な調査を官庁、公署その他適当と認める者に嘱託し、又は銀行、信託会社、関係人の使用者その他の者に対し関係人の預金、信託財産、収入その他の事項に関して必要な報告を求めることができる。

(証拠調べ)
第64条第1項 家事審判の手続における証拠調べについては、民事訴訟法第二編第四章第一節から第六節までの規定(同法第百七十九条、第百八十二条、第百八十七条から第百八十九条まで、第二百七条第二項、第二百八条、第二百二十四条(同法第二百二十九条第二項及び第二百三十二条第一項において準用する場合を含む。)及び第二百二十九条第四項の規定を除く。)を準用する。
第2項 前項において準用する民事訴訟法の規定による即時抗告は、執行停止の効力を有する。
第3項 当事者が次の各号のいずれかに該当するときは、家庭裁判所は、二十万円以下の過料に処する。
一第一項において準用する民事訴訟法第二百二十三条第一項(同法第二百三十一条において準用する場合を含む。)の規定による提出の命令に従わないとき、又は正当な理由なく第一項において準用する同法第二百三十二条第一項において準用する同法第二百二十三条第一項の規定による提示の命令に従わないとき。
二書証を妨げる目的で第一項において準用する民事訴訟法第二百二十条(同法第二百三十一条において準用する場合を含む。)の規定により提出の義務がある文書(同法第二百三十一条に規定する文書に準ずる物件を含む。)を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたとき、又は検証を妨げる目的で検証の目的を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたとき。
第4項 当事者が次の各号のいずれかに該当するときは、家庭裁判所は、十万円以下の過料に処する。
一正当な理由なく第一項において準用する民事訴訟法第二百二十九条第二項(同法第二百三十一条において準用する場合を含む。)において準用する同法第二百二十三条第一項の規定による提出の命令に従わないとき。
二対照の用に供することを妨げる目的で対照の用に供すべき筆跡又は印影を備える文書その他の物件を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたとき。
三第一項において準用する民事訴訟法第二百二十九条第三項(同法第二百三十一条において準用する場合を含む。)の規定による決定に正当な理由なく従わないとき、又は当該決定に係る対照の用に供すべき文字を書体を変えて筆記したとき。
第5項 家庭裁判所は、当事者本人を尋問する場合には、その当事者に対し、家事審判の手続の期日に出頭することを命ずることができる。
第6項 民事訴訟法第百九十二条から第百九十四条までの規定は前項の規定により出頭を命じられた当事者が正当な理由なく出頭しない場合について、同法第二百九条第一項及び
第二項の規定は出頭した当事者が正当な理由なく宣誓又は陳述を拒んだ場合について準用する。

(合意管轄)
第66条第1項 別表第二に掲げる事項についての審判事件は、この法律の他の規定により定める家庭裁判所のほか、当事者が合意で定める家庭裁判所の管轄に属する。
第2項 民事訴訟法第十一条第二項及び第三項の規定は、前項の合意について準用する。

(家事審判の申立書の写しの送付等)
第67条第1項 別表第二に掲げる事項についての家事審判の申立てがあった場合には、家庭裁判所は、申立てが不適法であるとき又は申立てに理由がないことが明らかなときを除
き、家事審判の申立書の写しを相手方に送付しなければならない。ただし、家事審判の手続の円滑な進行を妨げるおそれがあると認められるときは、家事審判の申立てがあったこ
とを通知することをもって、家事審判の申立書の写しの送付に代えることができる。
第2項 第四十九条第四項から第六項までの規定は、前項の規定による家事審判の申立書
の写しの送付又はこれに代わる通知をすることができない場合について準用する。
第3項 裁判長は、第一項の規定による家事審判の申立書の写しの送付又はこれに代わる通知の費用の予納を相当の期間を定めて申立人に命じた場合において、その予納がないときは、命令で、家事審判の申立書を却下しなければならない。
第4項 前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。

(審判)
第73条第1項 家庭裁判所は、家事審判事件が裁判をするのに熟したときは、審判をする。
第2項 家庭裁判所は、家事審判事件の一部が裁判をするのに熟したときは、その一部について審判をすることができる。手続の併合を命じた数個の家事審判事件中その一が裁判をするのに熟したときも、同様とする。
(審判の告知及び効力の発生等)
第74条第1項 審判は、特別の定めがある場合を除き、当事者及び利害関係参加人並びにこれらの者以外の審判を受ける者に対し、相当と認める方法で告知しなければならない。
第2項 審判(申立てを却下する審判を除く。)は、特別の定めがある場合を除き、審判を受ける者(審判を受ける者が数人あるときは、そのうちの一人)に告知することによっ
てその効力を生ずる。ただし、即時抗告をすることができる審判は、確定しなければその効力を生じない。
第3項 申立てを却下する審判は、申立人に告知することによってその効力を生ずる。
第4項 審判は、即時抗告の期間の満了前には確定しないものとする。
第5項 審判の確定は、前項の期間内にした即時抗告の提起により、遮断される。

(審判の執行力)
第75条 金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずる審判は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。

(即時抗告をすることができる審判)
第85条第1項 審判に対しては、特別の定めがある場合に限り、即時抗告をすることができる。
第2項 手続費用の負担の裁判に対しては、独立して即時抗告をすることができない。

(即時抗告期間)
第86条第1項 審判に対する即時抗告は、特別の定めがある場合を除き、二週間の不変期間内にしなければならない。ただし、その期間前に提起した即時抗告の効力を妨げない。
第2項 即時抗告の期間は、特別の定めがある場合を除き、即時抗告をする者が、審判の告知を受ける者である場合にあってはその者が審判の告知を受けた日から、審判の告知を受ける者でない場合にあっては申立人が審判の告知を受けた日(二以上あるときは、当該日のうち最も遅い日)から、それぞれ進行する。

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